ショートストーリー   〜情熱の彼方〜

私はその日、都営バスに揺られていた。
途中、オートバイに乗った少年に目が止まる、今まで街の風景に過ぎなかったそんな少年に今は心奪われる。
そう、今わたしは15年振りの納車の為にヘルメットを持って、オートバイショップに向かっているところだ。
その見かけた少年は、程良くクーラーの効いたバスの車内の自分と冷静に対比を実感させられる。

(その少年の15年後が今の私なのか?私の15年前がその少年なのか?)

少年の頃に「順等」に与えられ「オートバイ」という限られた乗り物。
そして15年立っても自分から離れなかった「オートバイ」に対する情熱。

クルマに「乗れる」様になって離れてしまった「オートバイ」
幾人かの友人の笑顔を奪っていった「オートバイ」
無くては困る訳では無い乗り物に私は再び乗ろうとしている。

バスがある停留所に着き私はバスを降りた。
程なく歩いた所にある小さなオートバイショップ「モトクェスト」
15年前、私が中型免許を取得したタイミングでオープンしオープニングセールとやらで初めての新車を買ったショップだ。

「こんにちわ。」
「いらっしゃい。おっ!来たねー!仕上がってるよ!」

一ヶ月前にココを思い出し、オーダーに来たのだが、事務的なやり取りだけでココでの昔話はあえてしなかった。
はたして店のオーナーが15年前の自分の事を覚えているかは分らない。

「どうする?乗って行く?車載での納車も出来るけど?」
「大丈夫です!乗って行けます。」

そのやり取りで私は15年前の同じやり取りを思い出した。
15年前の納車時、この店の目の前で私は初めての新車に舞い上がり初めての重量にいわゆる「タチゴケ」をした事を思い出した。
その後、新車を見せる約束をしていた友達の家までどう走ったのかも記憶がまったく無いほど「あざやか」な「タチゴケ」だった。
オーナーの心配そうな顔とその裏にある失笑を思い、納車後は気まずくてショップから遠退いてしまったのだが・・・
つまり、ここのオーナーとのコミュニケーションは今日を入れて5日目ほど時間にして6時間ほどしかないだろうか?
15年の内の6時間程度の時間など覚えて無いほど些細な時間だし、気まずい出来事も掘り起こしたく無かったので、
あえて『この店で買うのは二台目だ』とアピールしなかったのだ。

15年前とは「オートバイ」が違うが、そんな、15年立ってもさほど変わらぬやり取りに少し微笑ましいもの?を感じ
オーナーに訪ねて見た。
「久しぶりだからタチゴケしたりして?」
オーナーはニヤリと微笑み
「それじゃ、15年前から進歩してないね〜!」

オーナーは私を覚えていた。

 

〜情熱の彼方にある物はその始まりにあった。〜

  だが、情熱の持続の答えはまだ出ていない。

JUL. 2001 , neil. proof copyright.